衛星で見る福岡 / 防災・減災
衛星は災害に間に合うか
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↓ この数字が答えていないこと

この地図が答えていること/いないこと

福岡で実際に起きた5つの水害で、発災から最初のSAR観測までを測りました。36〜108時間です。浸水はその頃には引いています。跡のほうも、同じ道具で皆伐は写るのに、土砂崩れは写っていませんでした。

問いは「写るか」ではなく「間に合うか」でした

浸水域をSARで出す、という話はよく見ます。ですが福岡の水害5件で発災から最初のSAR観測までを測ると 36〜108時間でした(発災日の朝6時から数えています)。河川氾濫や内水氾濫の湛水はふつう数時間から1日で引くので、最初の1枚が届く頃には、水はもうありません。

2020年の大牟田市はとくにはっきりしています。浸水したのは7月6日で、次に福岡の上を衛星が通ったのは7月10日の夕方、108時間後です。雲を通せるというSARの長所は、そこに衛星がいなければ使えません。

光学は、半分が晴れて写るまで5〜24日かかりました

同じ5件で Sentinel-2 も数えました。対象の範囲の半分以上が晴れて写った最初の日は、発災から5〜24日後(2017年朝倉16日・2018年10日・2020年大牟田24日・2021年久留米5日・2023年久留米15日)。8割以上になると15〜50日後です。梅雨末期の豪雨のあとは雲が居座ります。SARの36〜108時間も遅いのですが、光学はさらに1桁遅い。雲を通せるSARに意味があるのは、この差のためです。

訂正(2026-09-11):最初の版では雲の判定の向きを取り違え、雲の割合を「使える割合」として出していました。そのため「2018年と2020年は4〜5日後に9割以上見えた」「2021年と2023年は使える撮影が1回もない」「カタログの雲量はAOIの雲を表さない(雲量90%のシーンがAOI内では100%使える)」と書いていましたが、いずれも誤りです。向きを正すと、雲量90.2%のシーンはAOI内も100%雲、雲量5.0%のシーンは0.3%雲で、カタログの雲量はおおむね合っていました。

通る回数は、アルゴリズムではなく機体の数で決まります

福岡の上をSentinel-1が通る間隔を12年ぶん数えました。2015年は11.5日、2016〜2021年は5.0日、2022〜2024年は12.0日、2026年は1.5日です。

棒の高さ=観測の間隔(高いほど粗い)。橙=1機、緑=2機、淡緑=3機

この段差が何なのかは、シーンの機体名を数えれば分かります ── 2016年にS1Bが加わって2機、2022年にS1Bが失われて1機、2025年にS1C、2026年にS1D。手法や解像度ではなく、空にいる機体の数がそのまま出ています。

同じ理由で使える軌道も入れ替わります。2時期差分は同じ軌道どうしでしか取れず、しかも軌道ごとに覆う範囲が違います。朝倉・東峰を2017年に覆っていたのは、軌道156なら100%、軌道54なら34%だけでした。そして軌道156は2022年以降は通っていません。

同じ道具で、皆伐は写って土砂崩れは写りませんでした

跡なら残るはずだと考えて、朝倉市・東峰村でSARの2時期差分を作り、Hansen が記録した損失の位置と突き合わせました。比べる相手は 0.5 ではなく、同じ組み方で、何も起きていない期間を引いた「空振り」です。

皆伐は本番 0.830 に対して空振り 0.528。差が +0.30 あり、写っています。土砂崩れは、1か月ぶんで差 −0.012、翌年の同じ季節と比べても +0.031。本番の AUC 自体は 0.68〜0.77 と高く見えますが、何も起きていない期間でも同じ場所が 0.69〜0.74 を出します。発災直後の1枚どうしにいたっては本番 0.485 で、空振りの 0.618 を下回りました。

空振りを付けないと、写ったように見えます

土砂崩れが起きたのは谷筋の急斜面で、ここは雨の前後で後方散乱が動きやすい場所です。そのため、災害と関係なく「この場所は他と違う動きをする」という癖だけで AUC が 0.6〜0.7 出ます。0.5 と比べれば写ったと言えてしまう数字です。

皆伐の場所にはその癖がなく、空振りは 0.528 とほぼ無情報でした。だから皆伐の 0.830 は本物で、土砂崩れの 0.766 は本物ではない。数字だけ並べると後者も十分高いので、対抗馬を置かないとこの区別はつきません。

この結論に着くまでに2回間違えました

1回目は、発災60時間後に撮れた軌道54で測って AUC 0.464 を出し、「写らない」と書きかけました。原因を探して傾斜・まとまりの大きさ・待ち時間を順に潰しましたが、軌道54はこの範囲の34%しか覆っておらず、全部が欠けた範囲の上での話でした。

2回目は、全面を覆う軌道156に替えて AUC 0.645〜0.766 を出し、今度は「写る」と書きかけました。空振りを付けたら消えました。

なお、2016年から2018年へ2年空けると差が +0.1 ほど出ますが、空振り側が2016年の1枚しか無く、組み方を揃えきれませんでした。ここは分かっていません。

平常時の1枚どうしでも13%が動きます

発災直後に使えるのは1枚どうしの差です。何も起きていない2017年6月20日と7月2日を引くと、森林の 12.9% が -3 dB を下回りました。発災をまたぐ7月2日と14日の組は 7.0% で、何も起きていないほうが多い。閾値をどこに置いても、平常時の揺れのほうが大きく出ます。

有料の線

無料で越えられないのは頻度です。Sentinel-1 は今でこそ3機で中央値1.5日ですが、浸水を捉えるには数時間の間隔が要ります。そこは商用の小型SAR群(ICEYE・Capella・Synspective など)の領域で、1日に複数回の観測と、災害時に撮る場所を指定するタスキングが売られています。このページで測ったのは、無料で行けるところがどこで止まるかです。止まるのは画像の質ではなく、撮影の時刻でした。

データと再現

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