福岡 / 無料の衛星データだけで

衛星で見る福岡

衛星データの用途としてよく挙がる15業種を、対象地域を福岡に固定して全部実装して実際に走らせた記録です。使ったデータはすべて無料で、アカウント登録も課金もありません。
各ページには出せた数字と、出せなかった理由の両方を載せています。後者を書いてある場所が他にないので、そこがこのサイトの中身です。

使える
6
問いに答えられる数字が出た
借りた
2
自作より、無料の完成品のほうが正解に近かった
限界に当たった
7
数字は出るが、問いに届かない
費用
0 円
有料の壁は買わずに線を測った。データが無くて止まったページは無い

公開しているページ

1業種1ページで、地図は上、数字が答えていないことは下です。15業種、全部そろいました。

健康・衛生使える
建物1棟ごとの地表面温度と、市内での順位
355,290 棟Landsat 熱赤外 54枚・13年ぶんの夏を合成。同じ健康のスギ花粉は3回測って未到達
農業使える
筑後平野の作付。国の農地台帳(72万区画)に、衛星は何を足すか
9.7% / 10.0%市町村別の水稲作付面積の誤差。衛星(緑だった田)と台帳(田の面積だけ)でほぼ同じ
水産・海洋使える
玄界灘から博多湾まで。よく使う格子の約77倍細かい
水温 60mそのかわり8日に1回・雲の日は欠測
行政・公共使える
市域の内訳と、この7年の変化
市街地 60.9%陸地に対して/最新は2023年=3年前
観光・生活使える
英彦山に雪は降るのか。13回の冬の観測をぜんぶ並べた
53枚中 5枚雪が写ったのはこれだけ。効くのは雪より雲
林業借りた
福岡の森林はどこが減ったか。24年ぶん
9,246 ha自分の検出は再現率48%・適合率36%。作らず Hansen を借りた
防災・減災限界
衛星は災害に間に合うか。福岡の水害5件で測った
36〜108 時間発災から最初のSAR観測まで。浸水はもう引いている
保険限界
衛星の植生指数で、米の不作の年が分かるか。作況24年ぶんで測った
ρ 0.30凶作4年のうち1年。水田の台帳を判読メッシュから区画に替えただけで、拾える凶作が2年から1年に変わった
不動産限界
衛星で、どこで開発が進んでいるかが分かるか。建築着工と突き合わせた
ρ 0.24人口だけなら0.95。緑が消えた597か所の半分は開発ではなかった
エネルギー借りた
福岡の太陽光を、4つの台帳で数える
0.94 倍借りた完成品は国の台帳の9割。自作は1.56倍に数えすぎ、余分はほぼ水面と屋根
金融・投資使える
衛星で、高炉が止まったのが分かるか。小倉第2高炉で測った
73% → 5%短波赤外の熱い画素が出た日。熱赤外は屋根を拾って外れた。分かったのは会社の発表の113日後
小売・商業限界
車1台は見えない10mで、駐車場の混み具合は分かるか
病院 −3.3%土日祝に空くのは写った。商業施設の土日の混雑は偶然と区別できない
運輸・港湾限界
博多港のクルーズ船を、無料の衛星で数えられるか
7.3%寄港1,245件のうち衛星が撮れていた割合。写った日は光学33/33・夕方のSAR16/19で当たる
インフラ点検限界
地面が何ミリ沈んだかは、無料の衛星で分かるか。国土地理院の干渉SARを借りた
−11 mm/年北九州空港の島は見えた。年に数mmでは水準測量・GNSS・干渉SARが食い違い、道路1本は分けられない
環境・カーボン限界
NO2 の面。何kmの格子まで模様が安定するかを測った
3.3 km品質で切った188軌道。最初の版の11.1kmは品質の悪い観測を混ぜていた。排出量は人口に負ける

15ページで当たった壁は、5種類でした

「無料だから精度が足りない」で片づけると、壁の形が見えません。15ページで当たった壁を分けると5種類あり、越え方がそれぞれ違います。お金で越えられるのは、解像度と、撮る時刻・回数の2つだけです。

壁ではない発見もありました。林業とエネルギーでは、自作より、無料で配られている完成品のほうが正解に近かったのです(森林は Hansen、太陽光は TZ-SAM が国の台帳の0.94倍)。インフラも位相は作れず、国土地理院の成果を借りています。作る前に、完成品があるかを探すほうが先でした。

いちばん役に立つのは、間違えた記録のほうです

15本を最初に走らせたとき、4本が間違っていました。全部エラーを出さず、それらしい数字を返していました。雲を外し忘れて地表面温度の幅が水増しされた、絶対45度の閾値が真夏に飲まれて対象の53.8%が該当した、指標の結果を「空き地」と呼んでいたが拾っていたのは市街地だった、対抗馬を置いていなかった。

追試では「限界」と書いていたもののうち1件が、自分のバグでした。正解データを当てるまで、バグは限界の顔をして台帳に残ります。

ページを作っている最中にも出ました。英彦山の積雪で「雪」と判定した画素を近赤外で調べたら、99%が水面(ダムや池)でした。積雪指数は「緑が短波赤外より強い」ところを雪としますが、水も短波赤外を強く吸うので同じ条件を満たします。近赤外の条件を足すまで、それは雪の地図ではなくダムの地図でした。

環境のページは、直したつもりの結論が、別の誤りの上に立っていました。3.3km の格子で NO2 の地図を描いたら赤と緑が散らばる市松模様になり、格子を粗くしていって「11.1km で構造が立つ。カタログの1画素の約3倍粗いところが実際に使える細かさ」と書きました。ところが本当の原因は、品質フラグの倍率(0.01)を掛け忘れて低品質の観測を全部通していたことと、夏ごとに新しい順90件だけ取っていて8月末の数日しか入っていなかったことでした。品質で切って188軌道を重ねると、3.3km の格子でも模様は安定します。症状に合わせて格子を粗くしても、原因は直っていませんでした。

1業種1ページにしてからも出ました。雲マスクの向きを逆に使い、防災のページに誤った記述を3つ書いて公開してしまいました(2026-09-11 に訂正し、ページに経緯を残しています)。保険は答え合わせの相手を間違え、運輸では予測を凍結したあとで測る範囲を広げて誤報を増やしました。後半の7ページは走らせる前に予測を書いて固定し、外れもそのまま本文に載せています(当たったのは、不動産が5本中1本、運輸とインフラが5本中2本)。

こういう否定的な結果は、データを配る側にも使う側にも書く理由がありません。各ページの下半分は、そのために置いてあります。

衛星で見る福岡 / 無料の衛星データがどこで詰まるか
衛星: Landsat 8/9・Sentinel-1/2/5P・MODIS・Esri土地被覆(Earth Search/Microsoft Planetary Computer、アカウント不要)。 借りた成果: Hansen Global Forest Change・TransitionZero Solar Asset Mapper・国土地理院 衛星SAR地盤変動測量成果。 正解: 作物統計・建築着工統計・国勢調査(e-Stat)、再エネ事業計画認定情報、福岡市のクルーズ客船寄港実績、環境省の地盤環境情報ほか。各ページの末尾に、そのページの出典があります。
Project PLATEAU(国土交通省 CC BY 4.0)/ 国土地理院タイル/ OpenStreetMap(ODbL)
生成は手元で行い、公開しているのは静的ファイルのみ。
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