どの田畑が作付けされていて、どこが裸地のままか。農地の範囲を国の台帳(筆ポリゴン・72万区画)に替え、圃場ごとに測りました。市町村別の水稲作付面積と突き合わせると順位相関0.996。ただし台帳の田の面積だけでも0.994で、県計で較正したあとの市町村ごとの誤差は 9.7% 対 10.0%。衛星が台帳に足したものは、ほとんどありませんでした。
前の版は、農地の範囲をAIが推定した土地被覆(2023年)で切り、30mの画素ごとに数えていました。ページには「農地の範囲も推定です」「圃場の単位ではなく画素の単位です」「この面は検証していません」と書いたまま、3つとも未着手でした。
その3つは、無料で配られている台帳で埋まりました。農林水産省の筆ポリゴンは、全国の農地の区画を田・畑の別つきで出しているデータで、出典を書けば商用利用も含めて自由に使えます。福岡県は 721,979区画(田 486,787件 60,560 ha/畑 235,192件 16,324 ha)。地図は、この区画ごとに2020年7〜8月の夏の最大NDVIを塗ったものです。
台帳の側にも但し書きがあります。筆ポリゴンは面積調査の母集団として、空中写真をもとに手作業で区画を作り、田畑の別は目視で判断したもので、測量の成果ではありません。現況と一致しないことがある、と配布元が明記しています。
台帳と衛星がそろったので、初めて答え合わせができます。正解は作物統計 令和2年産の市町村別水稲作付面積(市町村別の公表はこの年が最後)、対抗馬は筆ポリゴンの田の面積だけ(衛星を使わない)です。走らせる前に予測を5つ凍結しました。
| 凍結した予測 | 結果 | 判定 |
|---|---|---|
| 衛星(緑だった田の面積)と水稲の順位相関は 0.90 以上 | 0.996 | 当たり |
| 台帳だけでも 0.90 以上で、衛星との差は 0.05 未満 | 0.994(差 +0.002) | 当たり |
| 田の面積を除いた偏相関は 0.3 未満 | 0.63 | 外れ |
| 面積は水稲の 1.2〜2.0 倍 | 1.42倍(台帳の田は1.73倍) | 当たり |
| 畑は田より作付中の割合が低い(田0.85以上・畑0.75以下) | 田 82.6%・畑 83.2% | 外れ |
順位は衛星も台帳もほぼ同じでした。人の多い所に建物が多いのと同じで、田の多い市町村に水稲が多いからです。
外れた3番目が面白いところです。田の面積を統制した偏相関は 0.63 で、衛星は台帳に何かを足しているように見えます。実際、田のうち夏に緑になる割合(中央値 0.85)と、田のうち水稲の割合(中央値 0.59)は、市町村ごとに順位相関 0.61 で連動していました。
ところが、県全体の合計で較正してから市町村ごとの誤差を測ると、衛星 9.7%・台帳 10.0%(中央値)でほとんど変わりません(凍結後に足した測り方です)。同じデータで、統計量の選び方によって「足す」と「足さない」が逆に見えます。保険のページで衛星をTerraからAquaに替えると相関が割れたのと同じで、判定に使う量は先に決めておかないと、後からいくらでも選べてしまいます。
夏に緑だった田は 49,510 ha、水稲の作付面積は 34,911 ha で、衛星のほうが 1.42倍 多く数えます。田には大豆・麦のあと・飼料作物・自家用の作付が入るからで、NDVIが見ているのは緑の量だけ、作物の種類は分かりません。保険のページで「田の半分は稲ではない」と書いたのと同じことが、区画単位でも出ています。
畑も 83.2% が緑で、田(82.6%)とほとんど変わりませんでした。夏の畑は裸地が多いと考えていた予測は外れです。
夏の最大NDVIが0.25に届かなかった田は 1,566 ha。休耕か耕作放棄か、あるいは作付けが遅れただけかは、この地図では区別できません。
最初の版では、対象の矩形をそのまま数えて「作付中 72.6%」と出していました。ところがその範囲の35.8%は森林、41.0%は市街地で、農地は20.4%しかありません。森も夏はNDVIが高いので、山を作付中に数えていたのです。数字の計算は正しく、間違っていたのは何に対する割合かというラベルのほうでした。今回の版は、割合の分母が国の台帳の農地区画になったので、この種の取り違えは起きません。
無料で越えられなかったのは作物の種類です。稲か大豆か飼料かを分けるには、田植え期の湛水を捉える必要がありますが、福岡では田植え期と梅雨が重なり、光学では晴れた日が田植え前に偏ります(別の実験で確かめました。SARなら市町村別の作付面積で相関0.81まで行きます)。
もう1つは正解の側です。市町村別の水稲作付面積の公表は令和2年産で終わっていて、それ以降は県単位しかありません。衛星の答え合わせができる細かさは、統計の公表の仕方で決まっていました。