上空の二酸化窒素はどこが高いか。そして無料の Sentinel-5P で、何kmの格子まで模様が安定するか。最初の版は取り方を2か所間違えていて、「11.1kmより細かい構造は出ない」と書いていました。品質で正しく切った2024〜2026年の夏の188軌道で測り直すと、3.3kmの格子でも模様は安定し、都市部は郊外と海の1.8倍でした。
最初の版では「Sentinel-5P の夏の軌道を13本重ねた(2024〜2026年の6〜8月)」「3.3kmの格子では隣り合う格子の相関がゼロで、13本では11kmより細かい構造は出せない」と書いていました。見直したら、取り方に誤りが2つありました。
1つ目は、使った期間です。Sentinel-5P の棚には NO2 以外の物質も同じ場所に並んでいるのに、夏ごとに新しい順の90件だけを取ってから NO2 を抜き出していました。90件は各年の8月末の数日で尽きていて、使っていたのは2024年8月28〜31日と2025年8月27〜29日だけ。2026年は1本も入っていません。しかも同じ軌道の速報版と確定版を別々に数えていて、13本のうち独立な軌道は8本でした。
2つ目は、品質の切り方です。品質フラグはファイルの中で 0〜100 の整数(0.01倍して使う)なのに、倍率を掛けずに「0.75より大きい」で切っていたので、実質すべての観測を通していました。雲の上から測ったような低品質の値まで混ざっています(排出量を調べた別の実験では正しく割り戻していました)。
当時の「市松模様」「11kmより細かい構造は出ない」「東西0.455・南北0.272という向きの差」は、この2つの上に立っていました。当時は「1つの格子に入る観測が足りないから」と説明していましたが、主な原因は品質の悪い観測を混ぜていたことです。
NO2 だけを指定し、同じ軌道の重複を除くと、2024〜2026年の夏に独立な軌道が293本ありました。そのうち品質0.75以上の観測が福岡の上に20点以上ある188本を使いました。判定は最初の版と同じで、東西・南北の隣り合う格子の相関の平均が0.3を超える、いちばん細かい格子です。走らせる前に予測を3つ凍結しました。
| 凍結した予測 | 結果 | 判定 |
|---|---|---|
| 13本(3回の夏にまんべんなく)なら 7.8〜16.7 km。11.1 km はおおむね残る | 5.6 km | 外れ |
| 全部重ねれば 5.6 km 以下 | 3.3 km(188本) | 当たり |
| 都市部は郊外と海の 1.3倍以上 | 1.82倍 | 当たり |
| 重ねた本数(無作為に30回) | 3.3 km で安定 | 5.6 km | 7.8 km | それより粗い |
|---|---|---|---|---|
| 8本 | 12回 | 15回 | 2回 | 1回 |
| 13本 | 25回 | 5回 | 0 | 0 |
| 26本 | 29回 | 1回 | 0 | 0 |
| 52本・104本 | 30回 | 0 | 0 | 0 |
品質で切れば、8本でも半分近くが3.3kmで安定します。最初の版の「11.1km」は、観測の数ではなく、観測の質で決まっていました。188本の3.3km格子では、隣り合う相関が東西0.82・南北0.78で、向きの差もほぼ消えています。当時の日付の軌道を当時の品質の切り方で読み直すと7.8kmで、当時の11.1kmとは一致しませんでした(速報版と確定版の重複の入り方が違うためと考えられますが、確かめていません)。
凍結の外で、もっと細かい格子も試しました。2.2kmでも隣り合う相関は0.69、1.1kmでも0.45で、この物差しでは「安定する」側に入ります。ここまで来ると、この物差しは細かさではなく、ノイズの少なさを測っています。本当の NO2 の広がりはなめらかなので、ノイズが減れば隣どうしは似てきます。
1回の観測の画素は 5.5 x 3.5 km のままで、それより小さい物 ── 工場1本の煙突や幹線道路1本 ── は分けられません。「都市のほうが高い」までは言えて、「どこから出ているか」には答えられない。これは画素より対象が小さいという、トップページの壁1です。
同じ時期に、全国47都道府県で「衛星のNO2から排出量が分かるか」を、予測を凍結して確かめていました。正解は環境省の都道府県別CO2排出量(2023年度)です。衛星のNO2との相関は +0.60 でしたが、人口だけで +0.85。人口を除くと +0.17 しか残りませんでした。
排出量は、人口という誰でも知っている数でほぼ決まっていて、衛星の入る余地がありません。トップページの壁3(もう答えがある)と同じ形です。
最初の版では「同じ軌道の全域の中央値」を背景に置いて都市圏はその6.7倍と出しました。ところがその値は、その軌道が海の上を通ったか大陸の上を通ったかで動きます。別の日の1本で測ったときは 3.46倍でした。2倍近く違う数字が、どちらも「背景比」を名乗れてしまう。外の基準が不安定なときは使えないので、同じ地図の中で、都市部と郊外・海の比(1.82倍)に置き換えました。
測っているのは地面から対流圏界面までの柱に含まれる総量で、地表の濃度ではありません。同じ排出量でも、風が弱い日は溜まり、強い日は流れます。「その場所で出た量」ではなく「その時そこにあった量」です。撮影は1日1回、昼の同じ時刻で、朝夕の通勤の時間帯は入っていません。