上空の二酸化窒素はどこが高いか。Sentinel-5P の夏の軌道を13本重ねた。ただしこのページの結論は濃度そのものではなく、「何kmまでなら本当に見えているか」を測った結果のほうです。
カタログどおり 1画素 5.5 x 3.5 km なのだから 3.3km の格子で描けるはずだ、と思って作った最初の地図は赤と緑がランダムに散らばる市松模様になりました。本物の場なら隣り合う格子は似た値になるはずです。隣接する格子の相関を測ったら -0.075(東西)と -0.027(南北)、つまりゼロ。見た目は地図でしたが、中身はノイズでした。
格子を粗くしていって、隣り合う格子の相関がいつ立つかを走査しました。3.3km では相関ゼロ、11.1km でようやく平均 0.36 になります。つまり 13本の軌道では、11km より細かい構造は出せません。カタログの1画素(5.5 x 3.5 km)の約3倍粗いところが、実際に使える細かさでした。この地図は 11.1km の格子で描いてあります。
1つの格子に入る観測が足りないからです。この地図では格子あたり3本以上の軌道しか重なっていません。1画素の大きさは「1回の観測がどこまで細かいか」であって、「何回重ねればその細かさで安定するか」は別の話です。観測を増やせば細かくできますが、雲で落ちる日があるぶん、増やすには年数がかかります。
11.1km の格子で東西の相関は 0.455、南北は 0.272 でした。衛星が南北方向に軌道を回りながら帯状に観測するので、南北方向は同じ帯の中で、東西方向は帯をまたぐことがあり、揃い方が変わります。等方的なノイズなら両方向とも同じになるはずなので、この非対称自体が「構造がある」証拠でもあります。
11km まで粗くして構造が出たとしても、工場1本の煙突や幹線道路1本は分離できません。「都市のほうが高い」までは言えて、「どこから出ているか」には答えられない。これは精度の問題ではなく画素より対象が小さいという、越えられないほうの壁です。
最初は「同じ軌道の全域の中央値」を背景に置いて都市圏はその6.7倍と出しました。ところがその値は、その軌道が海の上を通ったか大陸の上を通ったかで動きます。別の日の1本で測ったときは 3.46倍でした。2倍近く違う数字が、どちらも「背景比」を名乗れてしまう。外の基準が不安定なときは使えないので、同じ画像の中での幅に置き換えました。
測っているのは地面から対流圏界面までの柱に含まれる総量で、地表の濃度ではありません。同じ排出量でも、風が弱い日は溜まり、強い日は流れます。「その場所で出た量」ではなく「その時そこにあった量」です。