衛星の植生指数で、米の不作の年が分かるか
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↓ この数字が答えていないこと

この地図が答えていること/いないこと

福岡県の作況指数24年ぶんを正解にして、無料の衛星(MODIS)で見た水田の植生指数が当たるかを測りました。登熟後期で順位相関0.30。凶作4年のうち拾えたのは1年で、平年並みの年を3回凶作と取り違えます。水田の範囲を判読メッシュから国の区画台帳(筆ポリゴン)に替えただけで、拾える凶作が2年から1年に変わりました。

比べる相手は「統計でもう払っている指数保険」です

衛星の植生指数で保険を払う、という話はよく見ます。ですが日本の農業共済には、すでに地域インデックス方式があります。作物統計の統計単収(10a当たり収量)が基準を下回った分だけ、地域一律で共済金が出る仕組みです。

つまり衛星が出てくる余地は、統計と同じ年を指せて、しかも統計より早いときだけです。そこで、福岡県の作況指数(2001〜2024年)を正解にして、同じ年を指せるかを測りました。

前回の答え合わせは、相手を間違えていました

最初の測定では、2017年の九州北部豪雨(福岡県の農林水産被害 約389億円)を指数が拾えていないことをもって「この指数は被害と別のものを測っている」としていました。

ところが2017年の福岡県の米は作況102の豊作です。被害の多くは林業や施設、米以外の作物で、米の指数が豊作と出ていたのは正しかった。比べる相手を、県全体の被害額から米の作況指数に替えました。

予測を先に凍結しました

走らせる前に、2つの窓について予測を書いて固定しました。盛夏(7/20〜8/20)は当たらない、登熟後期(9/1〜10/15)は少し当たる。福岡の凶作は収穫の直前に来ると読んだからです。

年ごとの順位(高いほど良い年)。灰=作況指数(橙は凶作)、青=盛夏の指数、緑=登熟後期の指数。棒を押すと地図がその年に変わる

結果は登熟後期が順位相関 +0.30(p=0.07)、盛夏が +0.21(p=0.16)。相関の幅は予測どおりです。

「盛夏で凶作を拾うのは1年以下」という予測は、最初の版(判読メッシュの水田)では2年が入って外れ、区画台帳に替えると1年になって当たりに変わりました。判定が台帳で入れ替わる、ということ自体がこのページの結果です(下の節)。

凶作の原因は、4年とも収穫の直前でした

2004年(作況83)は8月後半から10月にかけて5つの台風が来て、台風18号の潮風害が出ました。2006年(作況76)は9月17日の台風13号で、筑紫平野を中心に有明海沿岸で塩害が出ました。2019年(作況91)は8月末の記録的大雨(久留米で観測史上1位)と9月22日の台風17号による倒伏・潮風害。2020年(作況80)は、九州農政局の説明ではトビイロウンカ・登熟期の日照不足・台風が重なりました(九州全体について)。

どれも8月後半から10月の出来事で、盛夏の指数が効かないという読みの根拠はここにあります。逆に言えば、衛星の側がどんなに良くても、7〜8月の画像では福岡の凶作は予告されません。

保険の言葉で言うと、払う年を取り違えます

登熟後期の指数で下位4年に入ったのは 2012・2013・2020・2024年。当たったのは2020年(作況80)だけで、2004年・2006年・2019年の凶作は拾えず、代わりに平年並みの2012年(作況98)・2013年(作況96)・2024年(作況98)を凶作と取り違えました。

凶作4年のうち1年が当たる、というのはでたらめに4年を選んでも54%で起きる数です。保険にすると「払うべき年に払わず、払わなくていい年に払う」ことになり、これは指数保険でベーシスリスクと呼ばれるものそのものです。統計単収そのもので払う今の方式には、統計との取り違えは起きません(個々の農家とのずれは、どちらの方式にも残ります)。

衛星を替えると、答えが変わります

MODIS は午前に通る Terra と午後に通る Aqua の2機があり、同じ指数を別々に作れます。稲の画素に絞った登熟後期の指数で比べると、Aqua だけなら +0.48(p=0.01)、Terra だけなら +0.14(p=0.26)。同じ場所・同じ窓・同じ作り方で、「かなり当たる」と「当たらない」に割れました。

理由は確かめていません。午前と午後で雲のかかり方が違うこと、Terra は2020年以降に通過時刻がずれてきていることが候補です。いずれにせよ、どちらの衛星を選ぶかで結論が変わる指数を、支払いの引き金には使えません。

「田」の半分は稲ではありません

国の区画台帳(筆ポリゴン)で福岡県の田は 60,555 ha(486,787区画)。一方、令和2年産に実際に稲が植わっていたのは 34,911 ha、58%です。残りは大豆・麦のあと・飼料作物・休耕で、250mの画素では分けられません。「水田の植生指数」と呼んでいたものは、4割が稲ではない面でした。

予測を凍結したあとで、田植え期に水面が見えた画素(その年に稲が植わった画素)だけに絞る版を足しました。その画素は年によって 1,373〜4,305(中央値 3,047)。登熟後期の相関は +0.30 から +0.32 に上がりますが、凶作の拾い方(1年)と取り違え(2012・2013・2024年)は変わりません。凍結後に足した検証なので、上の判定には入れていません。

水田の台帳を替えたら、拾える年が入れ替わりました(2026-09-12)

最初の版は、水田の範囲を国土数値情報の土地利用細分メッシュ(100m・衛星画像の判読)で切っていました(福岡県 73,226 ha)。農業のページを作り直したときに使った筆ポリゴン(農林水産省・区画そのもの)に替えると、田は 60,555 ha。道や畦や宅地が入らないぶん、1万2千ヘクタール少なくなります。MODIS 250mの画素で「田が6割以上」は 12,152 → 7,723 画素。走らせる前に予測を5つ凍結しました。

凍結した予測結果判定
田が6割以上の画素は半分以下(6,000未満)に減る7,723(−36%)外れ
登熟後期の相関は 0.15〜0.45 に入る+0.30(前 +0.28)当たり
凶作4年のうち拾えるのは2年のまま1年(2006年が外れ、2024年が入った)外れ
Terra と Aqua の割れは残る(差0.2以上)+0.14 対 +0.48当たり
稲だけに絞った版は 0.25〜0.50+0.32当たり

相関はほとんど動きませんでした(+0.28 → +0.30)。ところが下位4年の顔ぶれが変わり、凶作と重なる年が2年から1年に落ちました。台帳をより正確なものに替えたのに、当たりが減ったわけです。

相関という数字は動かないのに、「どの年に払うか」という答えは台帳で入れ替わる。支払いの引き金にするなら、この揺れ幅こそが問題になります。衛星をTerraからAquaに替えたときと同じ形で、同じ指数が、材料の選び方ひとつで別の年を指します。

有料の線

無料で越えられないのは年数です。10mで5日おきに撮れる Sentinel-2 は2017年からで、その間の凶作は2019年と2020年の2回だけ。細かい画像を買っても、過去の凶作は増えません。25年さかのぼれるのは250mの MODIS だけで、この解像度では田の半分が稲ではない、というところで止まります。

もう1つ。16日合成の MODIS は、期間中でいちばん緑の日を選んで1枚にする作り方をしています。台風の塩害で数日だけ葉が枯れても、合成で消えている可能性があります。これは確かめていません。

なお、2025年産は作況指数の欄が空(…)で、作況単収指数だけが入っています。共済が使う統計単収(10a当たり収量)は続いています。

データと再現

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