2020年7月18日に止まった北九州の小倉第2高炉を正解にしました。熱赤外(Landsat)で「一番熱い所」を追うと、それは工場の屋根で、止まっても変わりませんでした。短波赤外(Sentinel-2)で1000℃を超える画素を数えると、止まる前は73%の日に出ていたのが、止まった後は5%に消えました。隣の戸畑は変わっていません。
金融で衛星がよく言われるのは「工場の稼働を空から見て、公式の統計より早く生産を知る」という使い方です。前回の測定では北九州の熱を測って「上位1%で168.5 ha・46か所」までは出しましたが、それが稼働と結びつくかは確かめていませんでした。
今回は止まった日が分かっている設備を正解にしました。日本製鉄 九州製鉄所 八幡地区の小倉第2高炉は、コロナの減産で2020年7月18日に吹き止められ、もともと決まっていた9月末の休止につながりました。対照は同じ八幡地区の戸畑第4高炉で、会社が2020年に出した一時休止の一覧に入っていません。
走らせる前に決めた方法は、Landsat の熱赤外(100m)で止まる前に敷地の中で一番熱い所を高炉とみなし、そこが敷地の中央値よりどれだけ熱いかを追うことでした。予測は「止まる前 +5℃以上 → 後 +2℃未満、戸畑は変わらない」。
結果は、小倉が +5.07℃ → +4.21℃、戸畑が +7.52℃ → +7.06℃。差の差は −0.40℃ で、止まる前の期間に偽の休止日を71通り置くと、62通りでこれ以上の変化が出ました。区別できません。

航空写真で見ると、どちらの「一番熱い所」も大きな工場の屋根でした。Landsat が通るのは午前10時半ごろで、日差しで焼けた金属屋根のほうが、100mの画素では高炉より熱く写ります。測っていたのは高炉ではなく、屋根の日当たりでした。
溶けた鉄やスラグのように1000℃を超える物は、2.2µm(B12)が1.6µm(B11)より明るく光ります。ふつうの地面や日差しで焼けた屋根では、この逆です(Marchese ほかの熱異常指数)。Sentinel-2 の20mの画素で、B12 が B11 より1割以上明るく、しかも十分に明るい画素を数えました。これは凍結した方法が外れたあとで足した方法です。3段の閾値は、止まる前と後を比べる前に決めました。
小倉では、止まる前は 37日中27日に熱い画素が出ていたのが、止まった後は 99日中5日になりました(片側 p = 2×10⁻¹⁵)。同じ時期の戸畑は 39日中39日 → 92日中91日で、変わっていません。止まった後の5日は、2024年8月13日・18日と2026年5月5日・10日・15日で、どちらも数日続けて出ています(最大41画素)。高炉が戻ったわけではなく、何だったかは確かめていません。見張りに使えば「再開したか」という誤警報になる種類のものです。

熱い画素が集まっていたのは高炉の横の広場で、形から溶けたスラグを流して冷やす場所と考えられます。同じ場所で熱赤外を測り直すと、止まる前から敷地の中央値より冷たく(−1.5℃)、100mの画素ではスラグの熱が埋もれていました。
止まった12日後(7月30日)の晴れた日には、もう熱い画素は0でした。ただ、止まる前にも0の日はあったので、1回では決め手になりません。27日後と32日後にはまた出ていて(4画素・2画素)、3回続けて0になったのは42日後(8月29日)でした。
その後、9月8日から12月12日まで95日間、小倉が9割以上晴れて写った日がありません。短波赤外は雲を通さないので、晴れない時期が続くとこうなります。
そして、日本製鉄はこの休止を2020年5月8日に発表していました。吹き止めの71日前です。衛星が確かめられたのは、発表から113日後でした。公表される出来事について、無料の衛星が投資家より早く知ることはありません。意味があるとすれば、発表されない出来事を見張るときで、そのときの遅れは雲しだいで数週間から数か月です。
無料で越えられないのは頻度と雲です。Sentinel-2 は5日おきに撮りますが、晴れていなければ使えず、今回は95日の空白ができました。
もう1つは測る波長の選び方で、これは無料で越えられました。「熱い物は熱赤外で見る」という直感は、100mの画素と午前の日差しの前では外れ、20mの短波赤外で1000℃を超える物だけを拾うほうが効きました。解像度を買う前に、何を測るかを変えるほうが先でした。