24年ぶんの森林損失を年ごとに見られます。ただしこのページの中身は、自分で作った検出器ではありません。もっと良いものが無料で配られていたので、借りました。
森林伐採は衛星データで分かります。現に分かっていて、その成果が Hansen Global Forest Change です ── Landsat の全時系列から作られた、全球30m・年次・査読つき・無料のデータで、20年以上更新され続けています。
こちらでも「2時期の植生指数を引き算する」という素朴な検出器を作って比べました。結果は再現率 48%・適合率 36%。Hansen の損失の半分は拾えますが、拾ったものの3分の2は外れです。自分で作る理由がありませんでした。
太陽光の最初の追試では、正解データで条件を引き直して再現率が 0.2% から 47.4% に上がりました。同じことを林業でも試したのですが、検証用に取っておいた市町村では F1 が 0.415 から 0.358 に下がりました。学習に使った市町村では適合率 41% まで行くのに、別の市町村に持っていくと 29% に落ちる。
太陽光で効いたのは条件の符号が逆というバグを直したからで、林業にはバグがありませんでした。伐採後に何が生えるか(草地・裸地・幼齢林)は場所で違うので、閾値が市町村をまたいで転移しない。「引き直せば越えられる」は一般則ではありませんでした。
年ごとの棒には 2016年からの段差があります。2001〜2015年の中央値が 268 ha なのに、2016年以降は9年すべてが 460 ha を超えています(中央値 541 ha)。「近年伐採が増えた」と読みたくなりますが、違います。
確かめ方はこうしました。2017年7月の九州北部豪雨で大きな土砂災害が起きた朝倉市・東峰村・添田町と、それ以外の9市町村に分けて、2016年の前後で比べました。増え方は 2.0倍 対 2.7倍。災害を受けた側のほうが、むしろ増えていません。災害が段差を作ったのなら逆になるはずです。
答えは Hansen 自身の注意書きにありました ── 「Landsat 8 の導入(2013年)と、とくに2015年の手法改善によって近年ほど検出が敏感になっており、新旧のデータを比較するときは注意すること」。段差は森林ではなく測り方にありました。
なお 2005〜2007年にも 461〜557 ha の山があります。こちらの理由は確かめていません。いずれにせよ、同じ年どうしの市町村比較には使えますが、年をまたぐ増減はそのまま読めません。
上から見て樹冠が減ったかどうかしか見ていないので、皆伐は出ますが間伐は出ません。木を間引いても樹冠は残るためです。日本の人工林の施業は間伐が中心なので、「この地図に出ていない場所で施業が行われていない」とは言えません。細い作業道も30mの格子には入りません。
Hansen が記録しているのは樹冠が失われたことであって、伐採とは限りません。土砂崩れ・風倒・林野火災・病虫害も同じ「損失」として入ります。今回は2017年の豪雨が主因ではありませんでしたが、原理的には混ざります。何が起きたかを知るには、この地図の上で別の情報と突き合わせる必要があります。
「今月伐られたか」は分かりません。年に一度、前年ぶんがまとめて公開されます。違法伐採の監視のように早さが要る用途には向きません。早さが要るなら、雲を通せるSARで自分で差分を取るほうに分がありますが、それは防災のページで扱っている別の話です。
この型(変化を見つける)には外部の正解があります。それは良いことばかりではありません ── 正解が既に完成した製品なら、自分で作る理由が消えます。インフラ点検で国土地理院の干渉SAR成果を借りるのと同じ形です。太陽光でも、あとで同じことが起きました。無料の完成品(TransitionZero の Solar Asset Mapper)が見つかり、国の台帳の0.94倍で、自作(1.56倍)より正解に近かった(エネルギーのページ)。完成品があるかを先に探すのが先で、作るのは後です。