博多港のクルーズ船の寄港1,405件を正解にしました。晴れた日の光学(Sentinel-2)は船がいた33日を全部当て、夕方のSAR(Sentinel-1)は19日中16日を当てました。船の長さも実績と合います(順位相関0.83)。ところが、中央ふ頭の寄港1,245件のうち、衛星が船のいる時刻に撮れていたのは91件(7.3%)だけでした。写れば当たります。壁は、撮る時刻と回数です。
空港の機体は、前回の測定で 4.13 m/px より粗くすると地面と区別できなくなりました。無料の10mでは数えられません。クルーズ船は長さ200〜350mあり、10mの画素に20〜35個並びます。運輸のうち、無料の解像度で写る大きさの物として港の船を選びました。
正解は、福岡市が公開しているクルーズ客船寄港実績です。2017〜2026年8月の1,405件に、着岸と離岸の時刻、船の長さ、岸壁(船席)が載っています(2021年は一覧がありません)。岸壁の位置は市の位置図と航空写真から引きました。中央ふ頭の南西面(5号岸壁 269m)と北西へ伸びた桟橋(6号岸壁 330m)に寄港の9割(1,245件)が集まります。
測り方は単純です。岸から10〜55mの帯(地図の枠)の中で、明るい画素が何割あるか。光学は近赤外が0.10を超える画素、SARはVVの後方散乱が0.3を超える画素です。何割で「船あり」とするかは2017〜2018年の画像で決め、2019年以降は動かさずに当てました。撮影の前後20分に着岸・離岸がある画像は、船が動いている最中なので外しています。
予測は「光学もSARも、船がいる時の検出率90%以上・いない時の誤報10%以下」でした。
晴れた日の光学は 33日中33日を当て、誤報は121日中8日(6.6%)。予測どおりです。夕方のSARは 19日中16日、誤報は144日中0日。朝のSARは船がいた日が1日しか無く(当たり)、誤報は196日中3日でした。SAR全体の検出率は85%で、予測の90%には届きませんでした。
SARで見逃した3隻は、長さ95mと123mの小さな探検船と、203mの船です。閾値は大きな船の多かった2017〜2018年で決まり、帯の34%です。100m級の船が光らせるのは帯(長さ約620m)の1割ほどで届かず、203mの船は31%で、わずかに届きませんでした。
中央ふ頭の寄港1,245件のうち、船が岸壁にいる時刻にどれかの衛星が撮れていたのは91件(7.3%)でした。予測は1〜2割で、外れました。
無料の衛星は、太陽と同じ向きで回る軌道なので、福岡では毎回ほぼ同じ時刻に来ます。光学は11時08分で、寄港の8割は船が岸壁にいる時刻です。ただし光学は雲を通さず、衛星が船の滞在中に来ていた134件のうち93件は曇っていました。SARは雲を通しますが、来るのは朝6時16分と夕方6時14分・22分。クルーズ船は朝6〜8時に着いて夕方〜夜に出るので、朝6時16分に岸壁にいたのは寄港の2.5%だけです。
さらに、夕方のSARを撮っていた Sentinel-1B が2021年12月に故障し、2022〜2024年は夕方の便がありません。この3年の寄港279件のうち、SARで撮れていたのは1件(前の晩から泊まっていた船を朝に撮ったもの)でした。2024年12月に打ち上げられた Sentinel-1C で2025年から夕方の便が戻り、撮れた割合は9%に戻っています。
晴れた日の光学で、帯の中の明るい画素が岸壁方向にどこまで続くかを測ると、実績の全長と順位相関 0.83(41日)で合いました。予測(0.6以上)どおりです。41日のうち31日は±30m以内でした。
短く出た日のうち、324mの船が180mになった日(2019-11-23)は、船の一部が帯の端より先にはみ出していました。ほかの日の理由は確かめていません。
ただし、衛星が見ているのは「岸壁に何かいる」ことで、それがクルーズ船かどうかではありません。コロナで寄港がほぼ無かった期間(2020年3月〜2023年2月、2021年を除く)にも、光学で47日中4日、SARで112日中2日、帯が光りました。光学の誤報8日を画像で見ると、薄い雲や霞が3日、クルーズ船ではない船が4日(帯の中の小さな船、桟橋の先を動く船)、画像そのものが港の別の場所を写していた日が1日でした。最後の1日は、同じ日付に Sentinel-2A と 2B の画像が2枚登録されていて、この日には来ないはずの2Bのほうを拾っていたものです。
予測を凍結したあと、画像を5日ぶん見て、帯を2か所で延ばしました。中央ふ頭では「300m超の船が5号岸壁の端よりはみ出していた」ので南西面の端まで、箱崎ふ頭では「船が帯より南にいた」ので西面の全長へ。判定の数字を見る前の変更でしたが、結果は悪くなりました。
延ばした中央ふ頭の帯では、朝のSARの誤報が196日中30日(15%)に跳ねました。延長部の端に、国際ターミナル寄りの常に明るい何かが入っていたためで、光学の誤報7日もすべてそこが光っていました。そこで判定は凍結した帯に戻し、延ばした帯は比較として地図に細い線で残しています。
箱崎ふ頭は判定できませんでした。2017〜2018年に晴れて船がいた日が3日しかなく閾値を決められず、中央ふ頭の閾値を借りると、船のいない日の89%で「船あり」になりました(SARでは17%)。予測は「誤報3割以上、原因は自動車運搬船やRORO船」でしたが、その日の画像を8日ぶん見ると、北側の帯で光っていたのは船ではなく、帯の内側の端に入った岸壁のコンクリートでした。数字は当たりましたが、理由が違うので外れとして数えます。
無料で越えられないのは撮る時刻と回数です。解像度ではありません。港の船は10mで写り、長さまで測れました。撮れた寄港が7.3%にとどまったのは、無料の衛星が毎日同じ時刻にしか来ず、光学は雲に、SARは時刻に阻まれたからです。好きな時刻に撮るには、商用のSAR衛星の群れや毎日撮る光学の商用衛星が要ります(有料)。
もう1つは船の名前で、衛星の画像からは分かりません。船名と位置は船が自分で出すAIS(船舶自動識別装置)の電波に載っていて、過去の記録をまとめて使うのは有料のサービスです。
そして博多港について言えば、市が寄港の予定も実績も公開しています。衛星で数える意味は、その記録を外から検算することか、記録を公開していない港やAISを出していない船を見るときに限られます。